『限りある時間の使い方』で時間管理の概念を覆したオリバー・バークマン氏による、待望の一冊です。
もしあなたが、「すべてを完璧にこなさなければ」というプレッシャーに疲れ果てていたり、増え続けるタスクリストを前に「どうせ全部は無理だ」と立ち尽くすことが多いなら、この本は現状を打破する強力なヒントを与えてくれるかもしれません。
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『不完全主義』とはどんな本か
本書は、人生が有限であり、すべてを完璧に成し遂げることは不可能であるという現実を真正面から受け入れる「不完全主義」という生き方を提案しています。
完璧を目指すあまり行動できなくなったり、未来の「完璧な状態」のために「今」を犠牲にしたりすることから脱却し、限られたリソース(時間、注意力)を本当に大切なことに注ぐための思考法と実践的なアプローチが紹介されています。単なる「あきらめ」ではなく、限界を受け入れた上で、より自由に、今この瞬間を大切に生きるための哲学書とも言えます。
本の魅力と注目ポイント
私が特に魅力を感じた点を3つに絞ってご紹介します。
1. 「完璧である必要はない」という許可
私たちはつい、仕事も私生活も完璧にこなそうと自分を追い詰めてしまいがちです。本書は、その「完璧主義」こそが、私たちを苦しめ、皮肉にも物事の達成を遠ざけていると厳しくも優しく指摘します。
「すべてはできなくて当然」という前提に立つことで、自分を責める気持ちが和らぎ、心がふっと軽くなるのを感じられるでしょう。これは、現実的な一歩を踏み出すための「許可」を自分に与えることに他なりません。
2. 「今、できること」に焦点を当てる実践的な思考
本書は単なる精神論に留まりません。「完璧な準備」を待つのではなく、不完全なままでも「ほんの少し進める」ことの重要性を繰り返し説いています。
例えば、膨大なToDoリストを「すべてを達成すべきリスト」ではなく、「選択肢が載ったレストランのメニュー表」(すべてを注文する必要はない)のように捉え直す、といった具体的な視点の転換方法が豊富に示されています。これにより、完璧を目指して動けなくなる「先延ばし」のループから抜け出し、日々の行動に取り入れやすくなります。
3. 人生の有限性を受け入れることで得られる「落ち着き」
前作『限りある時間の使い方』のテーマとも通じますが、本書はさらに一歩進み、「どうせ人生は思い通りにならない」という不完全さを受け入れることで、初めて得られる心の落ち着きについて深く掘り下げています。
未来への過度な心配や、すべてをコントロールしようとする無駄な努力を手放すことで、「今、ここ」にある現実を大切にする、地に足のついた視点が得られます。
少し気になった点
信頼性を高めるため、少しだけ気になった点にも触れておきます。
前作『限りある時間の使い方』を読んだ方にとっては、根底にあるテーマの一部が重複していると感じられる部分があるかもしれません。また、すぐに使える「裏技」的なノウハウを強く期待しすぎると、後半に進むにつれて人生論的な内容が少し抽象的に感じられるかもしれません。本書は小手先のテクニックではなく、物事の捉え方という根本からアプローチする本だと理解して読むと良いでしょう。
ただ、前作が「時間管理の哲学」だとしたら、今作は「不完全さを受け入れる実践編」として、より深く日常に落とし込むための補完的な役割を果たしていると感じました。
ネット上のレビューや口コミの要約
本書について、ネット上ではどのような声が上がっているか、良い点と気になる点をまとめてみました。
良いレビュー・口コミ
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完璧主義で苦しんでいたが、「だいたいで良いんだ」と心が楽になり、救われた気持ちになった。
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膨大なタスクに圧倒されていたが、「全部やるのは無理」と割り切れるようになり、本当に大切なことに集中できるようになった。
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「下手でもいいからやる」「不完全なまま進める」という気持ちになれ、先延ばしにしていたことに手をつけるきっかけになった。
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前作よりも実践的で、すぐに試せる考え方が多く、日々の生活に役立てやすい。
気になるレビュー・口コミ
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前作を読んでいれば、根幹のメッセージは共通しており、特に目新しい内容ではなかった。
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セクションごとにテーマが分かれているため、全体としてやや散漫に感じ、少し読みにくいと感じる部分があった。
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期待していた具体的なテクニックよりも、哲学的な内容や心構えに関する記述が多めに感じた。
まとめ:完璧主義に疲れたすべての人へ
『不完全主義』は、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込みがちな現代人にとって、重い肩の荷を下ろしてくれるような一冊です。
すべてをコントロールしようとすることをやめ、不完全な自分と予測不可能な現実を受け入れることで、逆説的により豊かに、そして落ち着いて生きられるようになる。本書は、そのための確かな指針と考え方を示してくれます。
完璧を目指して動けなくなっている人、日々のタスクに追われて「今」を楽しめていない人に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。「不完全でいい」という許可が、あなたの明日からの行動をきっと軽やかにするはずです。

